人魂の森(ひとだまのもり)

伝説の地(匝瑳地区大浦) 

 宮和田(みやわだ)に、こんもりと繁った森がある。 

 この森は、人魂(ひとだま)の森と呼ばれて、一本一本の木が人間ではないかと言い伝えられている。

 その昔、一人の木こりが、この森へ入っていった。

 「この森には、ずいぶん良い木があるぞ」

 木こりは、吸い込まれるように森の奥へ入って行った。

 しばらく行くと、何かまっ黒で大きなものにぶつかった。

 「あれえ、おったまげた。こんなでっけえ松の木は見たことがねえ。よし、これから切ることにしべえ」

 「ギーコ」、「ギーコ」

 木こりは、この森で一番大きな松の木を切り始めた。すると中頃まで切った時、

 「何だっぺ。何か赤いものが出て来たぞ。うわあっ、血、血、血だあっ」

何と、松の木からどろどろとした真っ赤な血が流れ出て来た。木こりは、気味が悪くなり、のこぎりをおいて一目散に家へ逃げ帰って来た。

 それ以来、夜になると、この森の上を青白い魂(たましい)が、ふわり、ふわりとさまよい飛んでいたと言われる。また、血の出た松の木の中には、この森の主である大蛇がいたとも伝えられる。

 村人は、この森を『人魂の森』とか、『ヘビの森』とか言って、近づかなかったそうだ。おかげで今でもこの森は、ひっそりとした寂しい森のままである。

 

原話 そうさの伝説とむかし話   

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