幸右衛門(こううえもん)のおばあさん

伝説の地(飯高地区仲台) 

 昔、飯高村の幸右衛門という家のおばあさんは、たいへん胆(きも)の座ったことで知られていた。 

サンプル画像ある時、小高の三十三枚田の上の山へ、栗拾いに出かけた。すると草むらに一斗入(いっとい)りの菰(こも)ほども太い大蛇が、とぐろを巻いて獲物をねらっていた。その話をあとから来た人に、驚きもせずに話すので、その人が恐る恐る行ってみると、もう大蛇は逃げてしまっていた。

 飯高寺と飯場台(めしばだい)の間の道は、木がこんもりと生茂って、昼でも暗いところであった。

 ある夜、おばあさんが通りかかると、大入道(おおにゅうどう)がヌーッ、と顔を出した。見ると一つ目のものすごい形相(ぎょうそう)だったが、おばあさんは少しも驚かず、

 「おらあ―、二つ目を持っているのに、お前は一つでかわいそうになあ―」

と言って通り抜けて、城下(ねごやや)で用事をたしたそうだ。

 帰り道、また大入道が現われ、今度は三つ目でおばあさんを睨(にら)みつけていた。

 「お前さんは悲しいことだね。人並みはずれて一つ目になったり、三つ目になったりして!」

と言い返して、平気な顔で家に帰り、その話をした。

 それを聞いた村人たちは、おばあさんの肝っ玉の大きいのに驚き、後のちまで語り伝えたそうだ。

 

原話 飯高村誌    

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