弘法の井戸(こうぼうのいど)
伝説の地(中央地区下出羽)
この話は、ずーっと昔、千年も前のこと。
寒い日の夕暮れ、一人のお坊さんが、この地を訪ねて来た。旅の僧のこととて、着ているものは粗末だし、顔も埃(ほこり)に汚れて、乞食と言ったほうがぴったりする姿であった。
「旅をする身だが、一夜の宿をお願い申す」
お坊さんは、次から次へと家々に頼んで歩いた。しかし、身なりの汚い僧を泊めてくれる家はどこにもない。
ところが、ちょうど西光庵(さいこうあん)の前を通りかかった時、一人のおばあさんが出て来た。
「私の家においでなさい。家には余分な布団もないがの―。どうにか寒さを凌(しの)ぐことはできるじゃろうて! どうぞ、どうぞ、こちらへ」
と言って家の中へ導いてくれた。
おばあさんの家は、屋根の低い暗い粗末な家で、真ん中に囲炉裏(いろり)、そして、釣りかぎに鍋(なべ)が一つかけられているだけだった。
「おはずかしいがのお―! 夕飯は、これで我慢してくだされや!」
と、おわんに一杯の汁をよそってくれた。
お坊さんは、
「ありがたや、ありがたや」
と言いながら、寒さとひもじさから一気に啜(すす)り込んだ。
「うっ」
と声ともならない言葉がお坊さんの口からはき出された。味が、ものすごく悪いのだ。しかし、親切なおばあさんの気持ちを壊さないようにと、じっと我慢して飲みほした。味と言うよりも、田の水を飲んだようなのである。
お坊さんの渋い顔を見たおばあさんは、
「味が、まずいじゃろ! この辺は、水が悪くての・・・・・・・」
翌日、お坊さんは井戸を見た。その井戸は浅く、ただ掘りおこしただけのものだった。
「おばあさんや、きのうのお礼に、私が井戸を掘ってしんぜよう」
こうして掘られた井戸が西光庵裏の井戸である。このお坊さんが、弘法大師であったと後になって分かったそうだ。
弘法の掘った井戸からは、冷たいきれいな水がいつも溢(あふ)れていたそうだ。
原話 そうさの伝説とむかし話
◇西光庵の跡地には現在下出羽のコミュニテイーセンターが建っている (平成18年10月撮影)
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