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種われの梅(たねわれのうめ)

伝説の地(飯高地区仲台) 

 昔、飯高村の小さな宿屋に甲斐(かい)の国の絹商人(きぬあきんど)が泊まった。

 もう国から持って来た織物は、ほとんど売りつくしておったので、胴巻(どうま)きにはずっしりと金が入っておった。

 「明日は、国へもどるので早出発(はやだち)をしたい。すまないが一番鶏が鳴いたらおこしてくれ」

と宿の主(あるじ)に頼むと、すぐ眠りについた。

 「お客さま、お客さま。もう、一番鶏が鳴きましたよ」

宿のおかみの声がした。絹商人は、眠い目をこすりながら、

 「寝たと思ったら、もう朝か」

などどいいながら起きて顔を洗った。

 まだ、真夜中のようであったが、早いにこしたことはないと、宿賃を払って、星あかりをたよりに山道を歩いて行った。

 昼でも暗い花輪峠(はなわとうげ)にさしかかると、竹やぶの中で、ガサッと人の動く気配がした。そして、黒い影が斬りかかって来た。

 「な、なに者だ。おれを殺して金を取るなら七代たたってやる」

と叫んだのが最後であった。

 「ふ、ふ、ふ、・・・・・・七代でも十代でも、たたれるものならたたってみろ」

 黒い影は、胴巻きをさぐって、ずっしりとした財布をつかむと、スタスタと足早に峠を下って行った。

 役人の検死がすむと、道ばたの馬捨て場に絹商人の亡きがらは手厚く葬(ほうむ)られた。そして、村人たちは一本の梅の木を墓の上に植えて冥福(めくふく)を祈った。

 それから十月(とつき)ほどたったある日、絹商人を泊めた宿屋に男の子が生まれた。

 この子が、三つになったある晩のこと、いつものように母親が抱いて小便をさせると、やっと使えるようになった言葉で

 「おっかあよ、今晩はまるで絹商人殺しがあった夜のようにまっ暗だなあ」

といった。

 宿のおかみは、この言葉を聞くとその場にへたりこんで、長わずらいの末にとうとう亡くなってしまった。そのあとを追うように宿屋の主も自分で命を絶った。

 あくる年の春になると、絹商人の墓に植えた梅がいっぱい花をつけて、実をならせた。だが、梅の実は、みんな中の種まで二つにわれてしまった。

 村人たちは、絹商人ののろいが梅の実に込められているにちがいないとおそれて、このあたりに近づかなくなったという。

 

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