伝説の地(野田地区野手) 

 明治三十三年(1900)に、西宿に大火があって、集落の中央に祀(まつ)ら

れてい八雲神社も全焼した。大火の数日前のこと、拝殿の屋根に黒い異様

な人影あるのを見つけた。夜のこと、しかもこともあろうにお宮の屋根にの

ぼるとはしからん―と里人が集まって、一時は大騒ぎとなった。

 が、どこに消えたのか、その影はどこにも見当たらなかった。そして境内は、

また元の静けさに戻った。 

 当時野手の地は、花柳界(かりゅうかい)のはなやかな時代だったので、花

柳界通いの人のいたずらとして片付けてしまった。

 その数日後に起こったのが大火であった。火事を知った八雲神社の神主は

おいに驚きお宮に駆けつけた。お宮の手前数十メートルのところまで行った

き、道の右側に編笠があるのに気付いた。この大火に編笠など問題でもあ

まいに、その笠を取り上げたとたん、現れたのが背の低い樽に納められた

雲神社のご神体であった。

 二度驚き、かつ喜び御神体を奉じて一目散に六社大神に向って走り、ひとま

ず神前に奉斎(ほうさい)した。後日の話であるが、集落民は、御神体は神主

が移したと思っていたが、事実はそうでなかった。お宮のなかから外にお移

した人がわからなかった。いうなら神業でもあったのか―と語り合ったという。


野栄町史付録  


   

  ◇野手にある八雲神社(平成18年10月撮影)